みなさん、こんにちは。コロナ禍がなかなか収束せずあれこれと不便なことや不都合なことが多くて嫌になりますね。

さて、今回は在宅試験では実際にどんなことをしているのか、詳しくご説明したいと思います。成績は追って投稿いたします。創作や昇段試験など、何かのお役に立てれば幸いです。

2021.4.15~4.20 、在宅による昇段試験が実施されました。日本教育書道研究会では八段の昇段試験を師範推挙試験と呼びます。15日、9時頃、宅配にて試験問題と指定用紙が届きました。試験の始まりです。

試験課題の説明をよく読む前に、「とにかくコピー!」ということで、古典の写真版のサイズを測り拡大倍率を計算することから始めました。昨年も受験しましたから、説明は読み飛ばしても大丈夫でした。

写真用のてかてかケント紙?で漢字の古典三種の臨書が必ず出題されます。なので、まずは拡大コピーな訳です。レイアウト(布置章法)を決めるのには、それぞれ大きさの異なる文字をほどよく調整し配置しなければなりません。隷書はどの文字もだいたい同じ大きさなので、配置はやりやすいです。

今回、写真版の古典は、拓本のもの(陰刻)2点、陽刻1点でした。文字の見えにくいところや、欠けているところは、手持ちのテキストと字典で何とかなりました。

二月ころ、Ibis paintXをiPadにインストールしましたので、写真を切り貼りして編集することが可能となりました。倣書、行草書創作、半切創作の3課題はこちらでレイアウトを決めました。集字は書法字庫(簡体字中国語)というアプリを用いつつ、確認は各種字典を用いました。

ibisPaintXだと、拡大縮小がピンチイン・アウトなのでその点はらくでした。中心を揃えるのも、画面に定規を表示できるので便利でした。また、作成したものは、iPadやiPhoneの写真に落とし込んで保存すれば、コンビニで普通紙プリントも可能です。今回はiPadの画面だけみて書くこととなりました。

【倣書・行草創作】「褒城聞曙鶏」

欧陽詢の書風 倣書 デッサン
古典からの文字は【鶏】だけでほかは改めて調べなくてなりませんでした。配置については大助かりでした。
ibisPaintX 使用

試験問題の古典の写真をうまくiPadで撮影出来れば、同様に編集できたのですが、どうしても歪んでしまいます。そのため、コピーによるお手本を苦心して作りました。切り貼りしてコピーをとり、チェック。大小バランスのおかしい文字は数パーセント刻みでコピーを複数とり、サイズ違いを貼り直してようやくそれなりのものになります。この作業のためにコンビニを何往復もしました。(^^;

前置きが長くなりましたが、このように、自分でまずお手本を作るところから始めるので、実際に筆を執ったのは翌日からでした。文字の調べものにかなりの時間と労力が必要でした。視力がどんどん落ちて字典の小さな文字などはぼやけてしまいました。

めんどうなのは、崩し方の分からない文字です。それらは日本人の方が出版されている五体字典で一般的なやり方を調べますが、中国古典では日本と違う崩し方も見受けられなかなか厄介です。師匠のいらっしゃる方は質問できるので幸いです。

とにかく調べなくてはならない漢字はとても多くあります。漢詩20文字の楷書・行書・草書。これだけで既に60文字です。倣書と創作のための漢字5文字。手紙とペン字の文章にあるそれぞれの漢字数十個。指定姓名の漢字5個。

上段 左から。

【隷書】開元占經 趙之謙 「龐鴻蓋乃道之」

【行書】黄州寒食詩巻 蘇軾 「竈焼湿葦那」

【楷書】牛橛造像記 北魏 「願牛橛捨於分」

【手紙文】卒業生が私の還暦祝いに油絵を描いてくれました。朝日が昇る東雲の画題で希望と勇気を頂いて日々新たに励んでおります。

【行草創作・倣書(欧陽詢または欧体)】「褒城聞曙鶏」

半紙課題 六種
本文・落款ともに配置で大きく失敗しております(´×ω×`)
もちろん文字造形も上手くはありません。

【漢詩(半切)】霏微過麥隴蕭瑟傍莎城靜愛/和花落幽聞入竹聲 (中唐・皎然)

半切課題

【漢詩(小文字)】霏微過麥隴蕭瑟傍莎城靜 愛和花落幽聞入竹聲 (中唐・皎然)

【ペン字】「善く行く者は轍迹なし」上手に歩く人は足跡を残さない。立派な仕事を遂げた人ほど手柄を誇らない。価値ある社会貢献とは目立たぬものだ。

半切と同じ漢詩の小文字(楷書・行書 4行)課題と、指定文章のペン字課題

今年の指定用紙は少し滲みやすく、墨液の濃さに苦労しました。含みすぎるとあっというに広がり、用紙をダメにしてしまいました。楷書と隷書は特に筆運びが遅い方なので、墨量にはかなり気を配りました。ダメにした用紙はその後、滲みのチェックに使いムダにならないようにしました。

時間経過により墨液から水分が飛んで墨が濃くなりますので、少量のお水を足したりするので、滲み確認といった作業が必要となります。濃すぎても薄過ぎても不都合なのです。

寝食を削って取り組んだ4日間でした。作品は20日午後5時必着ですので、実際には4日間となるのです。昨年秋に七段に合格された方は「書の教室」来年2月号に師範推挙試験の案内が載りますので、ご覧ください。

試験内容がテキストに掲載されるのはかなり遅い時期となります。上に紹介した課題にチャレンジしてみてください。古典臨書の写真版は後日撮影して投稿を修正しますので、暫くお待ちください。

それでは、7月号(6月21日ころ着)に合格者が発表されるまで、篠村の合否予想、課題採点などで楽しんでください。昨年は681点以上が合格でした。

本人予想は2~3点不足、残念ながら不合格です。減点箇所が明らかに存在すること。そもそも半数近い課題において得点が低いであろうこと。加点する程の良いところが見当たらないから、というのが理由です。(^^;

昨年の私の課題ごとの点数では、最低68点(行書)、最高84点(小文字とペン字)です。不合格 29位 680点でした。ちなみに七段以下昇段試験では87点が最高得点です。どう書けば90点に届くのでしょうね。何かの学科試験なら100点は取ろうと思えば取れるものですが、書に満点はありえないですね(^^)

篠村鳳春

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